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専門職向け 在宅サービス調整

在宅看取り支援の実践
退院支援から看取りまでの専門職の役割

この記事でわかること
  • 在宅看取りを希望する患者・家族への退院支援の進め方
  • 支援体制整備(在宅療養支援診療所・訪問看護)の確認ポイント
  • 急変時対応のルール化と家族への事前説明
  • 看取り後のグリーフケアと記録
  • 「在宅に戻せるか」の判断が難しいケースへの対応

なぜ退院支援職が在宅看取りに関わるのか

在宅看取りは、本人・家族の意思と在宅チームの整備が揃って初めて実現します。 その「橋渡し」を担うのが、退院支援職(MSW・退院支援看護師)の役割です。

「本人は自宅を希望しているが、家族が不安で踏み切れない」 「主治医が在宅看取りに消極的」 「訪問診療を行う医師が確保できていない」—— こうした壁をひとつずつ解決していくことが、退院支援職の実践課題になります。

ステップ1:本人・家族の意思を丁寧に確認する

在宅看取りの支援は、まず意思確認から始まります。 ただし、「自宅で死にたいですか?」と直接聞くことは適切ではありません。 以下のような問いかけで本人の気持ちを引き出しましょう。

💬 意思確認の言葉かけ例
  • 「退院後の生活について、どんなふうに過ごしたいと思っていますか?」
  • 「これからのことで、一番心配していることは何ですか?」
  • 「ご自宅での生活を続けたいというお気持ちはありますか?」
  • (家族へ)「ご本人の希望を、ご家族はどうお聞きになっていますか?」

ACP(人生会議)の文脈でこれらを行うと、本人・家族も話しやすくなります。 一度の面談で結論を求めず、繰り返し対話することが大切です。 → ACP(人生会議)の進め方〜専門職向け実践ガイド

ステップ2:在宅療養支援体制の整備を確認する

在宅看取りには、次の要素が揃っていることが必要です。退院前に確認しましょう。

✅ 在宅看取り体制チェックリスト(専門職用)

  • 在宅療養支援診療所(またはかかりつけ医)との連携確認
    24時間対応可能か/夜間・休日の往診体制はどうか/看取り対応可能か を確認
  • 訪問看護ステーションの導入が決まっているか
    急変時の連絡窓口になれるか、医師との連携体制があるか
  • ケアマネジャーは把握・介入しているか
    新規の場合、退院前から接触し情報共有できているか
  • 訪問介護(ヘルパー)の手配
    身体介護の頻度・回数・緊急時対応の有無
  • 緩和ケアの方針が決まっているか
    疼痛管理・医療用麻薬の使用方針・在宅での処方体制
  • 福祉用具・住環境の整備
    介護ベッド・エアマット・ポータブルトイレなどの手配状況
⚠️ 「訪問診療医が見つからない」ときの対応
地域によっては在宅療養支援診療所が少なく、主治医が「往診はできない」という場合があります。 地域の医師会・地域包括支援センター・訪問看護ステーションに「往診可能な医師を知っているか」を 問い合わせることが現実的な方法です。MSWとして地域の往診医リストを把握しておくことが強みになります。

ステップ3:退院前カンファレンスで体制を共有する

在宅看取りを目標とする場合、退院前カンファレンスでは在宅チームと病院側が 「急変時の対応方針」を明確に共有することが不可欠です。

📋 退院前カンファレンスで確認すべき事項(看取り対応)

  • 本人・家族の「自宅での看取り」の意思確認(その場で再確認)
  • 急変時の連絡先と連絡の順番(訪問看護師 → 往診医 の順が一般的)
  • 救急搬送を望まない場合、その意思をどう文書化するか
  • DNAR(心肺蘇生不実施)の方針と、その根拠(インフォームドコンセント)
  • 緩和ケア(鎮痛・呼吸苦)の在宅での対応方法
  • 亡くなった後の死亡診断書の手配(往診医が対応)
  • 家族が「やっぱり入院させたい」と思ったときの受け入れ病院の確認

ステップ4:家族への事前説明と心理的サポート

在宅看取りで最も重要な支援対象のひとつは「家族」です。 本人が希望していても、家族が不安を持ったままでは在宅看取りは成立しません。

💬
「何かあったらどこに電話するか」を繰り返し確認
「まず訪問看護師に電話する。救急車を呼ばない。」という手順を 文書で渡し、冷蔵庫や見えやすい場所に貼るよう伝えましょう。 パニック状態では正確に判断できないため、事前に体に染み込ませておくことが重要です。
💬
「看取り前のサイン」を家族に伝えておく
意識が遠のく、呼吸のリズムが変わる、手足が冷たくなるなど、 死が近づいたときに現れる変化を穏やかに伝えておくと、 家族が「慌てず側にいられる」ようになります。 この説明は訪問看護師や主治医と連携して行うのが適切です。
💬
「後悔」への先手を打つ
「自分がもっとしてあげられたら」という後悔は、 看取り後に多くの家族が経験します。 退院前から「今できている介護は十分なケアです」と伝え、 グリーフケアへの布石を打っておきましょう。

「在宅は無理」と家族が言うとき

家族が「不安だから施設か病院の方がいい」と言う場合、 その背景を丁寧に探ることが大切です。

  • 「夜中に何かあったらどうしよう」→ 24時間対応の訪問看護・往診医を確保できるか
  • 「介護の仕方がわからない」→ 退院前に訪問看護師から指導を受けられるか
  • 「自分の体力・精神力に自信がない」→ ショートステイや一時的な入院の選択肢を提示
  • 「仕事があって介護できない」→ 訪問介護の頻度・種類を増やせないか検討

「在宅看取りが無理だから施設・病院」ではなく、 「何があれば在宅が可能になるか」を一緒に考えることが支援の姿勢です。 それでも難しい場合は、本人・家族の意思を尊重した別の選択肢(緩和ケア病棟など)を提案します。

看取り後のグリーフケアと専門職の記録

在宅看取りが成立した後も、家族のグリーフ(悲嘆)への支援は続きます。 退院支援職として直接関わることは少ないですが、 訪問看護師・ケアマネジャーとの連携でフォローの体制を確認しておきましょう。

📝 看取り後の記録に残しておくべきこと
  • 本人・家族への意思確認の経緯(いつ・誰と・何を話したか)
  • 退院前カンファレンスの参加者・決定事項
  • DNAR等の方針と、主治医のインフォームドコンセントの確認
  • 連携した在宅チームの名称・連絡先
  • 退院後のフォロー状況(可能であれば)

在宅看取りを支えた経験を次に活かす

在宅看取りは、専門職としても深く心に残る経験です。 「うまく調整できた」「もっとこうすれば良かった」——どちらも次の支援に活きます。 チームで振り返りの時間を持つことが、支援の質を高め、専門職自身のバーンアウト防止にもつながります。

ご注意
この記事は一般的な実践知識の共有を目的としており、個別の医療判断を指示するものではありません。 DNAR等の倫理的判断は各施設の指針・倫理委員会の方針に従ってください。