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専門職向け 退院支援の実務

MSWの支援記録の書き方
残すべき情報と記録の質を高めるコツ

この記事でわかること
  • MSWの記録はなぜ重要か
  • 支援記録に必ず残すべき情報
  • 「読まれる記録」の書き方のコツ
  • SOAPと経過記録の使い分け
  • 開示・法的トラブルに備えた記録の注意点
  • 記録が積み上がることで支援の質が上がる理由

MSWの記録はなぜ重要か

医療ソーシャルワーカーの支援記録は、単なる「業務のメモ」ではありません。 記録には次のような重要な役割があります。

  • チームへの情報共有:他職種・担当者が支援の経緯を正確に把握できる
  • 継続性の保証:担当者が変わっても支援の方針・経緯が引き継がれる
  • 法的証拠:「何を説明したか」「誰が同意したか」を証明する
  • 診療報酬の根拠:退院支援加算・共同指導料の算定に必要
  • 自己の支援の振り返り:記録を読み返すことで支援の質が改善される
⚠️ 「記録がない=支援していない」になる
「電話で確認した」「家族に説明した」「施設に打診した」という事実も、 記録に残していなければ証明できません。 トラブルが起きたとき・監査が入ったとき・担当者交代のとき、 記録が「支援の証拠」になります。 記録を書く時間がないときは箇条書きでも構いません。「記録する習慣」を最優先にしましょう。

支援記録に必ず残すべき情報

📋 経過記録の必須項目

  • 日時(年月日・曜日・時刻)
  • 場所・手段(病室・面談室・電話・Zoom等)
  • 誰と話したか(本人・家族・ケアマネ・施設担当者・医師等)
  • 話した内容の要点(事実と発言を簡潔に)
  • 本人・家族の発言(重要なことは「 」付きで引用)
  • 意思決定の内容(何に同意したか・何を希望したか)
  • 次のアクション(誰が・何を・いつまでにするか)
  • 記録者の職種・氏名

「読まれる記録」の書き方のコツ

NG例OK例ポイント
「家族と話し合った」 「長女(●●)・次女(●●)と病室にて面談。在宅退院について両者とも同意。長女が主介護者となることを確認。」 誰が・何を・どう決めたかを明確に
「施設に問い合わせた」 「○○施設地域連携室(●●氏)に電話。現在空きなし。2週間後に再確認約束。」 施設名・担当者名・結果・次の予定を記載
「本人は在宅を希望している」 「本人より『なんとか自分の家に帰りたい』との強い希望あり。その意思を尊重して在宅方向で調整することを確認。」 本人の言葉を引用し、支援の方針の根拠にする
「同意を得た」 「退院支援計画書を本人・家族に説明。内容に同意を得て署名取得。コピーを本人に手渡した。」 何に対して・誰が・どのように同意したか
「ケアマネに連絡した」 「担当ケアマネ●●氏(●●事業所)に電話。退院予定日・ADL状況・医療処置を伝達。訪問看護の導入依頼を行った。」 氏名・所属・伝えた内容・依頼した内容を具体的に

SOAPと経過記録の使い分け

病院によってはMSW記録にSOAP形式が求められることがあります。 SOAPとは、医療記録のフォーマットの一つで、以下の4項目で構成されます。

項目内容MSW記録での例
S(Subjective)
主観的情報
患者・家族が言ったこと(本人の言葉) 「自分でできることは自分でやりたい。施設には入りたくない。」(本人)
O(Objective)
客観的情報
観察できた事実・他職種の情報 担当Nsより「ADLほぼ全介助。移動は車椅子。認知機能低下あり。」との情報提供あり。
A(Assessment)
アセスメント
情報を踏まえた支援者の判断 本人の希望と現在のADLに大きな乖離あり。在宅での独居生活は現状困難と判断。家族との面談が必要。
P(Plan)
計画・次の行動
次にとるアクション 長女と連絡を取り来週面談を設定する。要介護認定結果確認後、在宅サービス内容を具体化する。
💡 SOAP形式が必要ない場合も多い
MSWの記録は必ずしもSOAP形式である必要はありません。 電話連絡・書類送付・短い確認事項などは、日時・相手・内容・結果を 箇条書きで記録するだけで十分です。 SOAP形式は「アセスメントと計画を体系的にまとめたいとき」に活用しましょう。

開示・法的トラブルへの備え

患者や家族から「記録を見せてほしい」という情報開示請求は正当な権利です。 また、退院後のトラブル(転倒・事故・意思決定をめぐる紛争など)で 記録が証拠として使われることもあります。

📋 開示を意識した記録の原則

  • 事実と意見を分けて書く:「〜と思われる」「〜の印象あり」は推測として明示
  • 感情的・否定的な表現を避ける:「困難な家族」「協力的でない」等の主観は避ける
  • 誰が言ったかを明確にする:主語を省かない
  • 訂正・修正は正しく行う:二重線+訂正印(電子カルテは修正ログが残る)
  • 不明な点は「不明」と書く:推測で記録を埋めない
  • 否定的な内容は「なぜ書くか」を意識する:支援の根拠として必要な情報のみ記録
⚠️ 「書けない」ことを記録する
情報が得られなかった・面談できなかった・連絡が取れなかった、という 「できなかったこと」も記録の対象です。 例:「本日、長男に電話連絡を試みたが不通。折り返し依頼のメッセージを残した。」 これがないと「なぜ連絡しなかったのか」と誤解される可能性があります。

診療報酬算定と記録の関係

算定項目記録に必要な内容
入退院支援加算(A246) 退院支援計画の作成・患者家族への説明・同意の事実。スクリーニング実施記録。
退院時共同指導料(B007-2) 指導を行った日時・参加者・指導内容・文書提供の事実。
介護支援等連携指導料(B005-1-2) ケアマネ等との共同指導の日時・参加者・指導内容・文書提供の事実。月2回まで。
退院前訪問指導料(B007) 訪問日・訪問先・同行者・確認した内容・患者家族への説明内容。580点。

記録の質が支援の質を上げる

「記録は面倒」と感じる方も多いですが、 実は記録を書く習慣が支援者自身の思考を整理するという効果があります。 「今日この患者に何が起きて、自分は何を判断し、何をしたか」を言語化することで、 支援の課題が見えやすくなります。

また、記録が積み上がると「この患者は以前も同じことを言っていた」 「先月と比べてADLが低下している」という変化の把握にもつながります。 ケースを振り返る際の資料としても、スーパービジョンの材料としても、 記録は現場の専門性を支える土台です。