退院支援の現場では、ケアマネジャー・相談支援専門員や在宅支援者と行う「共同指導」が、患者さんの安全な退院に大きく貢献します。診療報酬でも評価されているこれらの取り組みですが、「何を記録すればよいか」「誰が対象か」で悩む方も多いのではないでしょうか。本記事では、介護支援等連携指導と退院時共同指導の実際と、記録の書き方を解説します。

⚠️ 大切な前提:これらの指導は「算定があるから行う」のではなく、患者さんの退院後の生活に必要だから行うものです。算定は「支援の質を評価する制度」であり、指導の目的は常に患者さんの生活の安全と安心にあります。
📎 根拠・参照
令和8年度診療報酬改定 告示・通知(介護支援等連携指導料 B005-1-2、退院時共同指導料 B004・B005)
※ 算定要件・点数・施設基準は改定のたびに変更されます。必ず最新の通知・医科点数表の解釈(最新版)および厚生労働省の疑義解釈をご確認ください。

2つの指導料の違いを整理する

まず、2つの指導料の違いを整理します。名前が似ていますが、目的・対象・算定する側が異なります。

項目 介護支援等連携指導料
(B005-1-2)
退院時共同指導料
(B004・B005)
誰が算定するか 入院医療機関 入院医療機関(B004)
在宅側(B005)
誰と行うか ケアマネ・相談支援専門員 在宅担当の医療職
(医師・看護師・薬剤師等)
主な目的 退院後のサービス計画の共同立案・療養上の指導 退院後の療養上の指導を在宅支援者と共同で行う
算定回数 入院中2回まで(原則) 退院時1回(原則)
文書提供 患者・家族への文書提供が必要
※ 詳細な要件・点数は医科点数表の解釈(最新版)でご確認ください。

介護支援等連携指導料(B005-1-2)の概要と実際

対象となる連携先

連携の相手は、退院後に患者さんのサービス計画を担う専門職です。

介護支援等連携指導料の対象となる連携先:

🏠 居宅介護支援事業所のケアマネジャー(要介護・要支援認定を受けた方が在宅に戻る場合)
🏛️ 地域包括支援センターのケアマネジャー(要支援認定の方、または新規申請でまだ認定が出ていない方等)
相談支援事業所の相談支援専門員(障害者総合支援法のサービスを使う方)

※ 退院後に使う制度・サービスの種類によって、連携先が変わります。介護保険と障害福祉の両方を使う場合は、両者と連携することもあります。

何を指導するか

患者さんの「退院後の生活」を見据えて、医療職とケアマネ・相談支援専門員が一緒に患者・家族に指導・説明を行います。ポイントは「医療の視点」と「生活・福祉の視点」を合わせることです。

✅ 介護支援等連携指導で共有・指導する主な内容
  • 現在の病状・治療方針・退院後も継続する治療の説明
  • ADL・生活上の注意点(転倒予防・動作上の制限等)
  • 服薬・医療処置の継続について
  • 食事・栄養管理の注意点
  • 退院後に必要なサービス・支援内容の確認
  • ケアプラン(サービス等利用計画)の方向性の共有
  • 本人・家族の意向・不安・希望の確認
  • 緊急時の連絡先・対応の確認
💡 早めに連絡することが大切
新規で介護保険申請が必要な場合、認定調査・審査に数週間かかります。入院初期にケアマネや地域包括支援センターに連絡し、早めに動き始めることで退院がスムーズになります。相談支援専門員も同様で、サービス等利用計画の作成には時間が必要です。

介護支援等連携指導の記録の書き方

記録には、「誰が・誰と・いつ・何を指導したか」が明確に読み取れることが基本です。算定要件を満たすかどうかは、記録の内容で判断されます。

記録に必ず含める要素

✅ 介護支援等連携指導の記録チェックリスト
  • 実施日時
  • 実施場所(病室・面談室等)
  • 参加者の氏名と職種・所属(医療側・ケアマネ側・本人・家族)
  • 連携先の事業所名・担当者名
  • 指導した内容(具体的に)
  • 本人・家族の意向・反応
  • 今後の方針・次のアクション
  • 記録者の氏名・職種

記録の文例

記録の文例(介護支援等連携指導):

✏️ 「〇年〇月〇日〇時〇分、〇〇病棟面談室にて介護支援等連携指導を実施。

【参加者】患者本人・長女(キーパーソン)・主治医〇〇・担当看護師〇〇・MSW〇〇・居宅介護支援事業所〇〇担当ケアマネジャー〇〇氏

【指導内容】主治医より現在の病状(右大腿骨頸部骨折術後、経過良好)と退院後の注意事項(転倒予防・荷重制限・外来受診の必要性)を説明。看護師より服薬管理・創部観察のポイントを説明。ケアマネ〇〇氏よりケアプラン案(訪問介護週3回・訪問看護週1回・通所リハビリ週2回)を提示し、本人・家族の意向を確認。

【本人・家族の反応】本人「なるべく早く歩けるようになりたい」と意欲的。長女「週3回のヘルパーで対応できるか不安」との発言あり。夜間の転倒リスクについて改めて説明し、夜間ポータブルトイレの設置を提案。本人・家族とも同意。

【今後の方針】ケアマネより退院日までにケアプランを確定、サービス事業所への連絡を行う予定。退院日は〇月〇日を目標とする。」
⚠️ 「指導した」だけでは不十分:記録には「何を指導したか」だけでなく、「本人・家族がどう反応したか」「今後どうなったか」まで書くことで、支援の継続性が担保されます。算定要件の確認だけでなく、記録が「支援の証」になるという意識で書きましょう。

退院時共同指導料(B004・B005)の概要と実際

退院時共同指導とは

退院時共同指導は、入院中の医療機関と在宅側の支援者が一堂に会し、患者・家族に退院後の療養上の指導を行う取り組みです。入院医療機関側(B004)と在宅側(B005)それぞれに診療報酬が設定されており、双方が算定できます。

在宅側の参加者

退院時共同指導に参加できる在宅側の職種(例):

👨‍⚕️ 在宅担当医師
🩺 訪問看護師
💊 薬剤師(保険薬局)
🦽 訪問リハビリ職(PT・OT・ST)
🏠 管理栄養士
🤝 ケアマネジャー・相談支援専門員 等

※ 医師の参加が望ましいですが、コメディカルのみの参加でも算定できる場合があります。詳細は医科点数表の解釈(最新版)をご確認ください。

文書提供の要件

退院時共同指導料を算定するには、指導の内容を文書にまとめて患者・家族に交付することが必要です(在宅側も同様)。この文書が、退院後の療養生活のガイドとなります。

✅ 患者・家族への交付文書に含める主な内容
  • 指導実施日・参加者(職種・氏名)
  • 退院後の療養上の注意事項(服薬・処置・生活上の制限等)
  • 緊急時の連絡先・受診目安
  • 退院後に利用するサービスの概要
  • 次回外来の予定
💡 文書の様式について
文書の様式は各医療機関・在宅側で自由に設定できますが、「誰が・何を・いつ説明したか」が記録されていることが重要です。退院時情報提供票と連動して作成すると効率的です。

退院時共同指導の記録の書き方

記録に必ず含める要素

✅ 退院時共同指導の記録チェックリスト
  • 実施日時・実施場所
  • 参加者の氏名・職種・所属(院内側・在宅側・本人・家族)
  • 指導した内容(療養上の注意・服薬・処置・緊急時対応等)
  • 患者・家族への文書提供の事実(「〇〇文書を交付した」等)
  • 本人・家族の意向・理解度・反応
  • 今後の支援方針・次のアクション
  • 記録者の氏名・職種

記録の文例

記録の文例(退院時共同指導):

✏️ 「〇年〇月〇日〇時〇分、〇〇病棟カンファレンス室にて退院時共同指導を実施。

【参加者】患者本人・妻・主治医〇〇・退院支援看護師〇〇・MSW〇〇/在宅側:訪問看護師〇〇(〇〇訪問看護ステーション)・ケアマネジャー〇〇(〇〇居宅介護支援事業所)・薬剤師〇〇(〇〇薬局)

【指導内容】①主治医より病状説明(心不全退院後の注意点・体重管理・塩分制限)および外来予約(〇月〇日)の確認。②退院支援看護師より内服薬の説明(利尿薬・降圧薬の目的・副作用・飲み忘れ時の対応)。③訪問看護師より体重測定の方法・浮腫の観察・異常時の連絡フローを説明。④薬剤師よりお薬手帳の活用・残薬管理について説明。⑤ケアマネより今後のサービス内容(訪問介護週2回・訪問看護週2回)を確認。

【文書提供】「退院後の療養上の注意点」文書を本人・妻に交付。

【本人・家族の反応】本人「体重をちゃんと測るようにします」と理解を示す。妻「夜中に急に苦しくなったらどうすればいいか」と質問。訪問看護師より夜間連絡先と対応フローを改めて説明し、安心されたご様子。

【今後の方針】退院日〇月〇日。初回訪問看護は退院翌日〇月〇日の予定(訪問看護ステーションと確認済み)。」

共通の注意点・よくある疑問

Q. ビデオ通話・オンラインでの指導は算定できますか?

ビデオ通話(お互いの顔が見える状態)での実施は認められています。遠方のケアマネジャーや在宅支援者にとって、ビデオ通話の活用は移動時間の短縮につながり、参加しやすくなるメリットがあります。

ただし、実施前には以下の点に注意が必要です。
・機器・アプリの事前確認(接続テスト・音量・映像の確認)
・音声が聞こえにくい・映像が乱れるなどのトラブルに備える
・患者さん側の端末操作サポートが必要な場合もある

なお、音声のみの電話は対象外となる場合があります。「顔が見える状態で行う」ことが基本的な考え方です。詳細な要件は医科点数表の解釈(最新版)および厚生労働省の疑義解釈でご確認ください。
⚠️ 可能な限り、直接会う機会を大切に
ビデオ通話は便利な手段ですが、可能な限り、本人・家族と支援者が直接顔を合わせる機会を設けることが望ましいです。

現場では、ケアマネジャーが本人とは会ったことがあっても、家族とは一度も会ったことがない——というケースは少なくありません。退院前のカンファレンスは、支援チーム全員が本人・家族と直接顔を合わせ、信頼関係を築く貴重な機会でもあります。退院後の支援をスムーズにするためにも、直接会える場を積極的につくりましょう。

Q. ケアマネがまだ決まっていない場合はどうしますか?

新規で介護保険申請中でケアマネが未定の場合は、地域包括支援センターに連絡して暫定的に対応してもらうことが多いです。地域包括支援センターのケアマネも介護支援等連携指導の対象となります。早めに地域包括に連絡し、入院中から関与してもらうことがスムーズな退院につながります。

Q. 介護支援等連携指導と退院時共同指導、両方算定できますか?

要件を満たせば両方算定することは可能です。ただし、それぞれの算定要件・回数制限を満たしているかを個別に確認が必要です。医科点数表の解釈(最新版)で算定ルールをご確認ください。

Q. 記録はカルテと別に残す必要がありますか?

電子カルテへの記録・紙カルテへの記録のいずれでも構いませんが、算定要件を満たす内容が記録に残っていることが重要です。各施設の記録管理ルールに従ってください。交付した文書のコピーをカルテに残しておくことも望ましいです。

記録で「よくある失敗」

⚠️ 記録のよくある失敗例:

❌ 「連携指導を実施した」のみで内容が書かれていない
❌ 参加者の職種・所属が記録されていない
❌ 文書を交付したことが記録に残っていない
❌ 本人・家族の反応や理解度が記録されていない
❌ 日時・場所が不明確

記録は「何かあったときに支援の事実を証明するもの」でもあります。後から見ても何が行われたかわかる記録を残しましょう。
💡 まとめ:記録を書く前に確認したい3つのこと

誰と行ったか——参加者の職種・氏名・所属が明確か
何を指導したか——具体的な指導内容が記載されているか
どうなったか——本人・家族の反応・今後の方針が書かれているか
📎 参考
令和8年度診療報酬改定 告示・通知(B004 退院時共同指導料1、B005 退院時共同指導料2、B005-1-2 介護支援等連携指導料)
厚生労働省 令和8年度診療報酬改定に関する疑義解釈資料
※ 算定要件・点数は令和8年度改定時点の情報です。次回改定で変更される場合があります。必ず最新の医科点数表の解釈でご確認ください。