退院支援は、一人の担当者がすべてを抱えて進めるものではありません。医師・看護師・退院支援看護師・MSW・リハビリ職・薬剤師・栄養士、そして地域の在宅支援者や行政が、それぞれの専門性を持ち寄ってはじめて、その人らしい退院が実現します。多職種連携の要は、「情報の共有」と「目標の一致」にあります。
※ 算定要件・点数の詳細は改定のたびに変更されます。必ず最新の通知・医科点数表の解釈(最新版)をご確認ください。
退院支援看護師とMSWの二人三脚
入退院支援の中核を担うのが、退院支援看護師とMSW(医療ソーシャルワーカー)です。両者の視点は異なりますが、その違いがチームの強みになります。
🩺 医療処置・看護ケアの継続性を確認(吸引・酸素・点滴管理など)
🩺 退院後に必要な医療・看護の視点でアセスメント
🩺 訪問看護指示書の準備など在宅医療につなぐ調整
🩺 病棟看護師と密に情報共有し、療養生活の実態を把握
MSWの主な役割:
🧑💼 生活・経済・家族関係などの社会的側面のアセスメント
🧑💼 介護保険・障害福祉・生活保護など制度につなぐ調整
🧑💼 在宅支援者(ケアマネ・相談支援専門員)や施設との連絡調整
🧑💼 本人・家族の意思決定支援
退院支援看護師が「医療・看護の橋渡し」を担い、MSWが「生活・社会資源の橋渡し」を担う。この二人三脚の体制が、安全で安心な退院を支えます。定期的に情報を共有し、互いの動きを把握しながら協働することが重要です。
病棟スタッフから得る「生活の情報」
退院支援に必要な情報は、カルテや検査データだけではありません。病棟で日々ケアにあたる看護師やワーカーの「現場の目」が、退院後の生活を見通すうえで欠かせない情報源です。
🍽️ 食事:介助の程度・摂取量・嚥下の状況・食形態の変化
🛁 入浴・清潔:一部介助か全介助か・皮膚の状態・羞恥心への配慮
🌙 夜間の様子:睡眠状況・夜間のナースコールの頻度・せん妄の有無
🚶 移動・ADL:ベッドから車椅子への移乗・歩行の安定性・転倒リスク
💬 本人の言動:「早く家に帰りたい」「施設は嫌だ」などの日常的な発言
👨👩👧 家族の面会状況:面会頻度・誰が来ているか・ケア参加の様子
退院支援担当者が病棟のカンファレンスや申し送りに参加したり、病棟スタッフに直接声をかけたりして情報を収集することが大切です。紙の申し送りや電子カルテの看護記録も重要な情報源です。本人や家族からは聞きにくいことも、病棟スタッフからは自然と共有されることがあります。
カンファレンスの開き方
カンファレンスの目的
退院支援カンファレンス(退院前カンファレンス・多職種カンファレンスとも呼ばれます)は、院内の多職種と在宅支援者が一堂に会し、退院後の支援方針を共有する場です。単なる「情報交換」にとどまらず、「誰が・何を・いつまでに行うか」を決める場として機能させることが重要です。
参加者の構成
カンファレンスへの参加者・進行方法は、各医療機関によって異なります。一般的には以下の関係者が参加します。
🏥 院内:主治医・病棟看護師・退院支援看護師・MSW・リハビリ職(PT/OT/ST)・薬剤師・栄養士 等
🏠 在宅支援者:ケアマネジャー・相談支援専門員・訪問看護師・訪問介護員・在宅医 等
👤 本人・家族(可能な範囲で参加を促す)
※ 全員がそろわなくても、必要な職種を優先して参加を求めます。
カンファレンスで共有すること
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1
現在の病状・治療方針 主治医から、退院後も継続が必要な治療や注意事項を共有します。
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2
ADL・生活状況の現状 リハビリ職・看護師から、現在の動作能力・介助量・ケアの内容を報告します。
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3
本人・家族の意向と希望 「どこで・どのように過ごしたいか」を全員で確認します。
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4
退院後のサービス・支援内容の調整 ケアマネが作成するケアプランと、院内での支援内容をすり合わせます。
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5
退院日・次のアクションの確認 退院予定日を共有し、「誰が・何を・いつまでに行うか」を明確にして終わります。
カンファレンスの内容は、書面(議事録・カンファレンス記録)にまとめて参加者全員に共有することが望ましいです。今の時代、本人・家族が録音するケースもありえます。記録の整理と共有を丁寧に行いましょう。
精神科・保健所・行政との連携
精神疾患を抱える患者さんや、複合的な生活課題を持つ方の退院支援では、院内の多職種だけでなく、精神科・精神科看護師・保健所・行政との連携が欠かせません。
🧠 精神科・精神科看護師:精神疾患を持つ患者さんの病状・服薬管理・生活能力のアセスメント。退院後の精神科外来や訪問看護との連携もここから調整します。
🏛️ 保健所:精神障害者の地域移行支援・措置入院後の退院支援・難病患者の在宅支援など。保健師が地域のコーディネーター役を担います。
🏢 行政(市区町村):介護保険の新規申請・障害福祉サービスの申請・生活保護の相談窓口。退院後の生活基盤に関わる手続きを担います。
🌿 地域包括支援センター:主に要支援認定の高齢者のケアプラン作成・高齢者の総合相談窓口。地域の情報収集や繋ぎ役としても活用できます。
🤝 福祉事務所・社会福祉協議会:経済的困窮・生活保護・日常生活自立支援事業(安心さぽーと等)など。民生委員からの情報提供や救急要請が入口になるケースもあります。
精神科領域では、退院後の生活に向けて相談支援専門員や地域の障害福祉サービス事業者との連携も重要です。院内の精神科看護師と連携しながら、地域の支援者との顔の見える関係を築いておくことが、スムーズな退院につながります。
退院時共同指導の活用
退院時共同指導とは、入院中の医療機関と在宅支援者が共同で、患者・家族に退院後の療養指導を行う取り組みです。診療報酬でも評価されており、在宅での療養を安全に継続するための重要な機会です。
✅ 退院前に、在宅側の医師・看護師・ケアマネ等が病院を訪問して行うことが基本
✅ 医師の参加が望ましいですが、コメディカル(看護師・リハビリ職等)も参加可能
✅ 本人・家族への指導内容(服薬・処置・緊急時の対応等)を文書で渡す
✅ 退院後に安心して療養生活を送れるよう、具体的・実践的な内容にする
・算定回数・要件(厚生労働省告示・通知)は最新の医科点数表の解釈をご確認ください。
・特定の疾患・医療処置がある患者では加算が設定されている場合あり
介護支援等連携指導の活用
介護支援等連携指導とは、入院中に医師やその他の医療職が、ケアマネジャーまたは相談支援専門員と連携して患者・家族への指導を行う取り組みです。算定があるから行うのではなく、患者さんに必要だから行うという姿勢が大切です。
🏠 居宅のケアマネジャー(介護保険・居宅介護支援事業所)
🏛️ 地域包括支援センターのケアマネジャー(要支援の方など)
♿ 相談支援専門員(障害者総合支援法による支援が必要な方)
※ 退院後の生活の場や使う制度によって、連携先が異なります。
✅ 入院中の早い段階からケアマネ・相談支援専門員に連絡を入れる
✅ 医療職(医師・看護師等)とケアマネが同席して患者・家族に指導する
✅ 退院後のサービス内容・ケアプランの方向性を医療側と共有する
✅ 新規で介護保険申請が必要な場合は早期に動く(審査に時間がかかるため)
・算定要件・点数の詳細は医科点数表の解釈(最新版)または厚生労働省の告示・疑義解釈をご確認ください。
栄養情報の引き継ぎ
退院後の安全な食生活のために、栄養士から在宅支援者への情報引き継ぎは重要です。特に嚥下障害・糖尿病・腎臓病・がんなど、食事に配慮が必要な方では、退院前に具体的な情報を伝えておくことが必須です。
- 退院時の食形態(普通食・きざみ食・ミキサー食・とろみ食 等)
- 嚥下の状況(ST評価・VF結果など)
- 食事制限の内容(塩分・カリウム・糖質制限 等)
- 摂取カロリー・栄養補助食品の使用有無
- 経管栄養(胃ろう・経鼻)の場合の注入内容・方法
- 食欲・摂取量の変化・体重の推移
- 退院後の訪問栄養指導の必要性
栄養情報は、ケアマネジャーや訪問看護師、施設スタッフにとっても非常に重要な情報です。サマリーや引き継ぎ文書に明記し、口頭でも確認することで、退院後の食事トラブルを防ぐことができます。
医療モデルから生活モデルへの転換
多職種連携の最終的な目標は、「治療する場」である病院から「生きる場」である地域へ、患者さんを安全につなぐことです。そのためには、医療職が「医療モデル」だけでなく「生活モデル」の視点を持つことが欠かせません。
🏥 医療モデル:病気・障害を「治す・管理する」視点。検査値・症状・治療が中心。
🏠 生活モデル:その人が「どう生きたいか」を中心に置く視点。本人の意思・生活習慣・環境・家族関係・地域とのつながりが重要。
退院支援に関わるすべての専門職が「生活モデル」の視点を持つことで、本人らしい退院が実現します。
それぞれの職種が「自分の専門分野だけ」で動くのではなく、本人を中心に同じ方向を向いて協働することが、チーム医療・多職種連携の真髄です。情報を共有し、お互いの専門性を尊重しながら、退院後の生活を一緒に支えていきましょう。
※ 各加算の算定要件・施設基準は令和8年度改定のものです。次回改定で変更される場合があります。必ず最新の厚生労働省通知・医科点数表の解釈をご確認ください。