在宅で介護をしていて、こんなふうに思ったことはありませんか。

「少しだけ、休みたい」
「法事があるけれど、家を空けられない」
「自分が入院することになった。この人をどうしよう」

こういうとき、介護しているご家族が休むために、ご本人に短期間入院してもらうという方法があります。レスパイト入院といいます。受け皿になることが多いのが、地域包括ケア病棟です。

ショートステイは知っていても、レスパイト入院はご存知なかった、という方は少なくありません。たんの吸引や点滴、在宅酸素などがあってショートステイを断られた方でも、相談できる場合があります。

この記事で扱うのは、医療保険を使った入院の話です。介護保険のショートステイとは、使う保険が違います。

レスパイト入院とは

レスパイト(respite)は「休息」「ひと休み」という意味の言葉です。レスパイト入院とは、在宅で療養している方に短期間入院してもらい、その間に介護しているご家族に休んでいただくための入院をいいます。

たとえば、次のような場面で使われています。

介護に疲れて、少し休みたい:夜間の吸引や体位変換で、何か月も眠れていない
介護している方自身の体調不良・入院・手術:自分が治療を受けている間、看る人がいない
冠婚葬祭・法事:どうしても家を空けなければならない
仕事・出張・遠方の用事:数日間、家を離れる必要がある
介護している方の休養を、定期的にとっておきたい:倒れてしまう前に、あらかじめ予定に組み込む
⚠️ 「レスパイト入院」は、国が定めた正式な制度の名前ではありません。全国どこでも同じ条件で使える制度ではなく、それぞれの病院が、地域の実情に合わせて行っている取り組みです。そのため、受け入れの条件・期間・空き状況は病院によって異なります。「必ず使えるもの」ではない、という点はあらかじめ知っておいてください。
💬 現場から:相談に来られるご家族の多くは、限界まで我慢してから来られます。「まだ大丈夫」と思っているうちに、介護している方が先に倒れてしまうことがあります。そうなると、ご本人の生活も一緒に崩れてしまいます。休むことは、介護を続けるための準備です。後ろめたく思う必要はありません。

ショートステイとの違い

「家族が休むために預かってもらう」という点では、介護保険のショートステイ(短期入所)と目的は同じです。大きく違うのは、使う保険受け入れる場所です。

🏠 ショートステイ
・使う保険:介護保険(要介護認定が必要)
・場所:特別養護老人ホーム、老人保健施設などの介護施設
・手続き:ケアマネジャーがケアプランに位置づけて手配
・費用:介護保険の自己負担分+食費・滞在費

🏥 レスパイト入院
・使う保険:医療保険(要介護認定がなくても相談できます)
・場所:病院(地域包括ケア病棟など)
・手続き:病院に申し込み(かかりつけ医・ケアマネジャーを通すことが多い)
・費用:入院費(高額療養費制度の対象)+食事代など

順番としては、まずショートステイが基本です。そのうえで、医療的なケアがあって施設では受けにくいときに、レスパイト入院が選択肢になります。

💡
レスパイト入院が検討されやすいのは、こんなときです
・たんの吸引が頻回に必要
・経管栄養(胃ろう・経鼻)や中心静脈栄養
・在宅酸素療法、人工呼吸器を使っている
・点滴や注射を続けている
・褥瘡(床ずれ)の処置が必要
・インスリン注射など、医療者の管理が必要
・病状が不安定で、急な変化が心配

こうした理由で「ショートステイを断られた」という経験がある方は、レスパイト入院を相談してみる価値があります。

なぜ地域包括ケア病棟なのか

地域包括ケア病棟は、平成26年度の診療報酬改定でつくられた病棟です。急性期の治療を終えた方がリハビリを続けたり、自宅に帰る準備を整えたりするほか、在宅で療養している方を支えるという役割をもっています。

この「在宅で暮らしている人を地域で支える」という役割があるため、レスパイト入院の受け皿になっている病院が多いのです。

🏥 知っておきたいこと
・地域包括ケア病棟に入院できるのは、制度上最長60日です
・ただしレスパイト入院は、実際にはもっと短い期間で設定している病院がほとんどです(日数は病院によって決められています)
・地域包括ケア病棟に限らず、療養病棟や一般病棟で受け入れている病院もあります

病棟のしくみそのものについては、地域包括ケア病棟とは?の記事でくわしく解説しています。

どこに相談すればいい?

相談する相手は、いまの状況によって変わります。

1
ケアマネジャーがいる方 → ケアマネジャーへ
「レスパイト入院をしている病院を探してほしい」と伝えてください。地域のどの病院が受けているかを把握していることが多く、病院探しを引き受けてもらえます。
2
ケアマネジャーがいない方 → 地域包括支援センターへ
介護保険をまだ使っていない方はこちらへ。介護保険の申請が必要かどうかも、あわせて相談できます。
3
どちらの場合も、かかりつけ医(主治医)に相談を
病状の情報がなければ、病院は受け入れを判断できません。

主治医に相談すると、こうなることがあります。

🩺 治療や検査が必要と主治医が判断すれば、かかりつけの病院に入院できることがあります
🛏️ ベッドが空いていなければ、ほかの病院を紹介してもらえることがあります
🏠 医療的なケアが少なければ、介護保険のショートステイのほうが早く手配できることもあります
🏥 いま入院中の方 → 病院の相談窓口・地域連携室へ
退院後にレスパイト入院を使う準備について相談できます。医療ソーシャルワーカー(MSW)が配置されている病院では、ケアマネジャーとの調整も含めて相談できます。
📌 この記事で扱うのは「医療保険を使った入院」です。ショートステイは介護保険、レスパイト入院は医療保険使う保険が違います。どちらになるかは、医療的なケアがどれくらい必要かで変わります。介護保険の申請のしかたは介護保険サービスの使い方の記事をご覧ください。

費用のこと

レスパイト入院は医療保険を使った入院です。そのため、費用の考え方は通常の入院と同じです。

高額療養費制度の対象になります:ひと月の自己負担には上限があります
限度額適用認定証、またはマイナ保険証を使えば、窓口での支払いを最初から上限額までに抑えられます
食事代・差額ベッド代は高額療養費の対象外です(別に必要になります)
✅ 実際の金額は、入院する日数・病室の種類・所得区分によって変わります
⚠️ 令和8年(2026年)8月から、高額療養費の上限額が引き上げられました。以前に入院されたことがある方は、「前より高い」と感じるかもしれません。新しい上限額は限度額適用認定証の記事に一覧で載せています。
💬 先に確認しておくと安心です:「何日入院すると、だいたいいくらになりますか」と、申し込みのときに病院の窓口や相談員に聞いておくことをおすすめします。特に個室しか空いていない場合、差額ベッド代が思ったよりかかることがあります。差額ベッド代は、同意書にサインをしなければ支払う必要はありません(病院側の都合で個室に入る場合など)。気になるときは遠慮せず確認してください。

申し込みから入院までの流れ

病院によって手順は異なりますが、おおよそ次のような流れです。

1
ケアマネジャー・かかりつけ医に相談する
「いつごろ、何日くらい休みたいか」を伝えます。希望日の1〜2か月前には相談しておくと安心です。
2
病院に問い合わせ・申込書を出す
病状、飲んでいる薬、医療処置の内容、日ごろの介護の状況、希望する日程などを書いて提出します。病院ごとに専用の用紙があることが多いです。
3
病院で受け入れを検討する
ベッドの空き状況、必要な医療処置に対応できるか、感染症の有無などを確認します。ここに数日〜2週間ほどかかることがあります。
4
返事をもらい、日程を決める
受け入れ可能となれば、入院日と退院日を調整します。
5
書類・持ち物をそろえる
かかりつけ医の診療情報提供書、お薬手帳、保険証(マイナ保険証)、限度額適用認定証、入院時の持ち物を準備します。
6
入院
入院中の様子は、退院時にケアマネジャーにも共有してもらいましょう。次に使うときの参考になります。
⚠️ 「来週から」は、ほとんどの場合むずかしいです。ベッドの空き状況しだいで決まるため、急な申し込みには応じられないことが多くあります。予定がわかった時点で、早めに相談してください。
💡
定期的に使いたいときは、次の予定を先に決めておく
「3か月に1回、1週間」のように、あらかじめ計画に入れておく方法があります。退院するときに次の入院の相談をしておくと、予約が取りやすくなります。疲れてから探すのではなく、疲れる前に予定しておくほうが、介護は長く続けられます。

受け入れてもらえないこともあります

正直にお伝えしておきます。レスパイト入院は、希望すれば必ず使えるものではありません。断られる理由には、次のようなものがあります。

病棟が満床:これが一番多い理由です
病院ごとの条件に合わない:「その病院にかかっている方に限る」「〇〇市にお住まいの方に限る」「事前の登録・面談が必要」など
医療的な理由:状態が不安定で急変の心配がある、感染症がある、など
行動面での対応がむずかしい:夜間に落ち着かない、点滴を抜いてしまうなど、病棟の体制では見きれない場合
そもそもレスパイト入院を行っていない病院もあります
💡
断られたときに、次に考えること
・ケアマネジャーにほかの病院を当たってもらう(地域に複数あることがあります)
老人保健施設のショートステイ(短期入所療養介護)を検討する。看護師が配置されているので、一定の医療的ケアに対応できます
在宅のまま休む方法を組み立てる。訪問看護の回数を増やす、訪問介護(ホームヘルパー)を入れる、夜間対応のサービスを使う、といった方法があります

そして大事なことがひとつ。一度断られたからといって、もう使えないわけではありません。時期を変えれば受け入れてもらえることはよくあります。あきらめずに、もう一度相談してみてください。

よくある質問

何日くらい入院できますか?
病院によって決められており、数日から2週間程度としているところが多いようです。地域包括ケア病棟の入院そのものは制度上最長60日ですが、レスパイト入院はそれよりずっと短い設定が一般的です。申し込みのときに確認してください。
急に頼むことはできますか?
むずかしいことが多いです。ベッドの空き状況で決まるため、1〜2か月前からの相談をおすすめします。ただし、介護している方が急に倒れたなど、緊急のときは事情を説明して相談してみてください。対応してもらえる場合もあります。
毎月でも使えますか?
病院ごとに「年に〇回まで」「〇か月に1回まで」といった目安を設けていることがあります。地域の中で限られたベッドを分け合っているためです。定期的に使いたい希望があれば、そのことを最初に伝えて相談してください。
介護保険を使っていなくても利用できますか?
レスパイト入院は医療保険を使う入院なので、要介護認定がなくても相談できます。ただし受け入れの条件は病院によりますので、まずはかかりつけ医に相談してください。あわせて介護保険の申請も進めておくと、退院後の生活が組み立てやすくなります。
入院中にリハビリはしてもらえますか?
病院によります。地域包括ケア病棟ではリハビリを行う体制がありますが、レスパイト目的の入院でどこまで行うかは病院の方針しだいです。希望があれば申し込みのときに伝えておきましょう。
入院すると、かえって弱ってしまわないか心配です
その心配はもっともです。入院中は動く機会が減るため、体力が落ちることがあります。だからこそできるだけ短い期間で区切ること、ふだんの生活の様子(歩行、食事、トイレの方法など)を細かく病院に伝えておくことが大切です。「家ではこうしています」という情報が、入院中の過ごし方を決める材料になります。

まとめ

この記事のまとめ:

レスパイト入院は、介護しているご家族が休むために、ご本人に短期間入院してもらう方法。受け皿になることが多いのが地域包括ケア病棟
✅ ショートステイは介護保険・介護施設、レスパイト入院は医療保険・病院。医療的なケアがあってショートステイを断られた方の選択肢になる
✅ 国の正式な制度名ではなく病院ごとの取り組み。条件・期間・空き状況は病院によって違う
✅ 費用は医療保険の入院と同じで高額療養費制度の対象。食事代・差額ベッド代は別
✅ ベッドの空き状況で決まるため、希望日の1〜2か月前に相談
✅ 断られても、ほかの病院や別の方法がある。時期を変えれば受け入れてもらえることもある

介護している方が倒れてしまう前に、休む方法を用意しておいてください。まずはケアマネジャー、かかりつけ医、病院の相談窓口へ。
📎 参考

補足:「レスパイト入院」は診療報酬上の正式な名称ではありません。地域包括ケア病棟入院料は平成26年度の診療報酬改定で創設された入院料で、算定できる期間は最長60日と定められています。

※本記事は2026年9月時点の一般的な情報です。受け入れの可否・条件・期間・費用は医療機関によって異なります。実際のご利用にあたっては、必ず病院にご確認ください。

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